【レポート】移民政策と雇用保護

移民政策と雇用保護

外国人労働者の受け入れ拡大、日本の低技能労働者の雇用を減少させるか?

少子高齢化に伴う労働者不足の影響で、日本は外国人労働者数が2018年10月発表のデータで1,460,463 人にまで増えている。前年同期比で181,793 人(14.2%)増加し、過去最高を更新した(厚生労働省発表データ)。更に、2019年4月1日には低技能外国人に日本で労働を目的とするためのビザを発行する「特定技能制度」が新設された事で、今後新たに年間で約34万人の外国人労働者が新たに来日することが予定されている。これらの影響で、昨今メディアにおいて移民問題は取り上げられる機会が格段に増えた。移民問題を考える上で重要な議論の1つが、他国でも問題となっている「自国民の雇用保護」である。

 これまで、日本は移民受け入れ(外国人労働者受け入れ)が他国と比べて活発に行われていなかった(※1. 国内の全労働者における外国人労働者割合: シンガポール 29.5% ドイツ 11.2% イギリス 8.6% アメリカ7.0% 韓国 2.2% 日本1.8%)こともあり、自国民の雇用保護に関する目立った議論・抗議活動は行われていなかった。しかし、日本では今後更に外国人労働者の受け入れが進んでいくことが見込まれる為、今回「外国人労働者の受け入れ拡大、日本の低技能労働者の雇用を減少させるか?」について考察を行う。

 ・外国人労働者受け入れの定義

外国人労働者の受け入れには、外資系企業の幹部クラス・外交官・弁護士・スポーツ選手等の高技能労働者の受け入れから、介護・農業・建設等の産業で低技能労働者として勤務する外国人、日本人と結婚したり日系2世・3世など地位や身分に基づく理由で永住ビザを保有する外国人の就労まで、その分類は多岐に渡る。そこで、今回意味する外国人労働者というのは、「労働目的で海外から日本に来る、低技能外国人労働者」に限定する。

2019年7月現在、低技能外国人労働者が労働の目的でビザを取得できるのは基本的に技能実習制度又は特定技能制度であるが、特定技能制度は技能実習制度が抱える問題点を改善するために新設された制度であるので、今回外国人労働者の受け入れで意味するのは「特定技能ビザで日本に働きにくる外国人労働者」と定義する。この定義の上で「外国人労働者の受け入れ拡大、日本の低技能労働者の雇用を減少させるか」の問いに対しての考えとしては「(現在の)移民政策が続くと仮定しても、日本人低技能労働者の雇用への影響は無い、もしくは限りなく少ない」のではないだろうか。

理由として3つ。1つ目に、これから日本が積極的に外国人を受け入れるのは、人手不足が深刻な特定産業のみであること。出入国在留管理庁が2019年7月現在発表している内容によると、低技能労働者として日本で外国人が労働ビザを獲得できるのは、人手不足が深刻な14の特定産業(介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業務)のみである。これらの産業は日本人の就業希望者が求人数に比べて圧倒的に足りておらず、かつ、日本の現在の年代別人口ピラミッドや特殊出生率を考えると今後も人手不足は継続すると思われる。よって、上記14産業で外国人労働者が増えたとしても日本人労働者の完全失業率への影響はほとんど無いと思われる。

2つ目の理由として、日本語というマイナー言語は外国人労働者にとって大きな障害になる点。他国と異なり、日本は自国でしか使えないマイナー言語が使われる国家で、外国人が数年日本語を勉強してコミュニケーション能力を向上させたとしても、労働現場で日本人のネイティブよりもイニシアティブを発揮するということは考えづらい。よって、言語の側面から考えても低技能外国人労働者の増加は低技能日本人労働者の雇用に影響を与えづらいと推測する。

3つ目の理由として、現在の移民政策(特定技能制度)は期間付きの受け入れだということ。2019年7月現在、出入国在留管理庁が発表している内容によると、低技能労働者として日本で外国人が労働ビザを獲得できる特定技能ビザは大きく2種類ある。1つは特定技能1号(特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格)で、毎年ビザの更新申請が必要かつ、通算で上限5年までと制限が課されている。もう1つは特定技能2号(特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格)で、こちらも基本的には毎年ビザの更新が必要となっている。よって、仮に外国人を受け入れているような人手不足産業で今後外国人の労働量の拡大/ITによる省人化が進み日本人で就職出来ない人が出てくるような状況になったとしても、日本政府は彼らを母国に戻すことで日本国民の雇用の保護を行う事が可能である。

上記理由から、今後日本で(現行の)移民政策が進んだとしても日本の低技能労働者の雇用が減少するとは考えづらいのではないだろうか

【参考資料】

※1: 独立行政法人労働政策研究・研修機構2017年「Databok 国際労働比較」

※2: 厚生労働省
※1参考資料※2: 厚生労働省

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※2参考資料

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