【レポート】メキシコ経済と格差

メキシコの経済と格差について

この記事では、メキシコの経済と止まることのない国内の格差について。

  • メキシコとは?

まずメキシコは国土面積は13位、人口は1億2351万人、国内総生産で統計を取った経済規模は世界15位、購買力平価は11位である。またメキシコは標高が高い場所が多いことに加えて、山岳地帯が多いことでも知られ、日本と並んで地震大国でもある。

  • メキシコとNAFTA

近年のメキシコ経済にとって一番の転換点であったのは、北米自由貿易協定(NAFTA)の締結であろう。この協定の締結によりアメリカ、カナダの多国籍企業が賃金が低く、最低限の教育を国民が享受しているメキシコに多くの工場を作り、一時的に経済は上向いたものの、結局は隣国のアメリカに輸出の約80%を依存することになり、21世紀に入ってからは再び経済は混迷を極めている。また現在、メキシコの最低賃金は4.6ドルと日本円で約500円程であり、アメリカとメキシコの労働賃金の格差は15:1と同じG20に加入している隣国同士であるにも関わらず、大きな格差がある。

  • メキシコの貧困

このNAFTAの締結の前から、メキシコ政府はメキシコ国内北部地域に限り、アメリカと国境を接しており積極的に輸出を行えるという理由で「マキラドーラ」という保税加工制度により、工場地帯が多く作られた。そのため、現在でも日本や韓国のアジア系企業を含めた多くの企業が、メキシコ北部に支社や工場を設けている。このことから北部は相対的に貧困率が低いことも特徴である。例えば、南バハカリフォルニア州の貧困率は国内で一番低くて19.2%,またアメリカ合衆国カリフォルニア州と国境を接しているバハカリフォルニア州は、貧困率が22.9%とメキシコ国内でも賃金が高く、経済的は安定していると言える。しかしメキシコ国内南部ではチアパス州の貧困率が68.3%、オアハカ州が63.7%約7割が貧困層に相当するなど、国内だけでも貧困の格差が大きく開いている。

また国内の平均の貧困率は40%と言われているが、これにも疑問を呈す学者が多く存在する。というのもメキシコでは、社会保障の網の外で働いているいわゆるインフォーマルな経済の下で生計を立てている国民が、約60%存在すると言われており、首都のメキシコシティにおいても、30万人がインフォーマルな経済の下で就労をしていると言われている。つまり、こういったインフォーマル経済で働く人たちを含めると、60~70%が貧困層ではないかと言われている。社会の貧富の格差を示すジニ係数では、過去最悪の1994年の0.52から2016年には過去最良の0.43を記録した。しかし、ジニ係数では1に近づくほど不平等が大きくなると言われており、0.4以上は「社会的騒乱多発警戒レベル」に該当していることから、決して喜ぶべきことではない。このことからも、先進国でありながら貧困率が高く、経済も低迷していることが伺える。

  • メキシコの抱える課題

ではなぜ、ラテンアメリカの優等生とも称されるメキシコが、アメリカやカナダと肩を並べることができないのか。その理由はいくつか挙げられるが、最も大きな理由はメキシコ政府の腐敗と汚職であろう。メキシコ国内では、最低賃金が4.6ドルなのに対して、政府官僚は中間層の20倍もの収入を得ていたり、メキシコの石油の利権を一部の財閥が、不正に占有していたりなど一部の人間が富を独占していることは、半世紀以上も国内の大きな社会問題である。また、社会的流動性が2.1%と極度に低いことからも、こういった一部の人間が、親から子へと権力と富を継承している事実が浮き彫りになる。実際、PEMEX というメキシコ最大手の石油会社では、ガソリンスタンドの経営権をPEMEXに協力する人や政治家の夫人へのプレゼントにするなど、身内の人間だけが富を独占しているという事実が明らかにされた。しかし未だに全てが解決したわけでなく、うやむやになっているのが現状である。

またマフィアとの麻薬戦争も大きな要因になっている。半世紀以上に及ぶ政府とマフィアとの抗争により、国の治安が悪化しただけではなく、抗争を終わらせることができない政府に対しての信頼度が低下している。このことにより、メキシコ国内の優秀な人材がアメリカやヨーロッパへ移住するなど、頭脳流出を助長させる結果となった。特に貧困率の低いメキシコ北部において、アメリカへの麻薬の密輸や密入国ビジネスで生計を立てるマフィアが多く存在することから、バハカリフォルニア州を中心に治安が極度に悪化しており、麻薬や不法移民問題で揺れるアメリカとの国際問題にもなっている。治安の悪化を理由に海外の企業がメキシコから撤退するなど、メキシコ経済にも大きな影を落としている。

  • それでもメキシコの幸福度は高い

メキシコは上記の通り、かなり厳しい経済状況の中にいる。しかし国民の幸福度は相対的に高く、首都のメキシコシティでは市民の満足度は90.1%と非常に高い。また、メキシコ人の幸せ度は10ポイント中8.3ポイントと国内全体で見ても高いことが伺える。これは、メキシコ人は貧しくても、家族や周囲の人間との関係に最も価値を置いていることが幸福度が高い理由ではないかと言われている。このことから、経済的繁栄や物質的な豊かさが国民の全ての幸福の要因でないことがわかる。このメキシコ人の価値観を是非日本人も取り入れるべきではなかろうか。

【参考文献】

国本伊代「現代メキシコを知るための70章 第二版」明石図書 (2019 )

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