【レポート】日本における災害の実例と国民保護法および「緊急事態条項」

日本で起きた大洪水

2017年7月5日、福岡県と大分県を中心とする九州地方北部で集中豪雨が発生した(平成29年7月九州北部豪雨)。この集中豪雨は、同年6月30日から続いた梅雨前線および台風3号に起因する豪雨の一部である。

  • 平成29年7月九州北部豪雨の概要

九州地方北部では、対馬海峡付近の梅雨前線に向けて南海上の熱帯低気圧等から暖かく湿った空気が流入した。その一方で、梅雨前線上空には冷えた空気が滞留し、大気の状態は不安定となっていた。福岡県筑後地方の朝倉市付近や大分県西部の日田市付近で積乱雲が次々と発生し、線状降水帯(発達した雨雲が帯状に連なるもの)も島根県西部で発生した。これらの要因により、記録的な大雨がもたらされることとなった。

福岡県内では7月5日17時51分に、大分県内では19時55分に大雨特別警報が発表された。朝倉市では1時間最大雨量が129.5mm、24時間雨量が525.5mmとなり、日田市では1時間最大雨量87.5mm、24時間雨量は350.5mmを記録した。大雨特別警報の発表時、気象庁は「甚大な被害の危険が差し迫っている」とコメントした。防衛省内に災害対策連絡室が設置され、稲田朋美防衛大臣(当時)が救援活動実施等を指示した。結果的に大分県のほぼ全域で大雨特別警報が発表されることとなり、平成25年の台風26号に匹敵する強力な台風であった。集中豪雨に対し日本赤十字社が義援金を募り、8月15日時点で9億7,109万8,894円(34,361件)が集められた。

  • 平成29年7月九州北部豪雨の被害状況

この集中豪雨による死者は37人、行方不明者が4人である(2017年11月時点)。福岡県朝倉市では桂川が、同県添田町では彦山川が、大分県日田市では大肥川と花月川が氾濫した。被災地には大量の流木が漂着し、その量は約20万t、36万m3と推測される。住宅の破壊や河川のせき止め等、流木によっても甚大な被害が生じた。また、大分県日田市のJR久大本線の鉄橋も流失し、交通の便にも影響を及ぼした。福岡県および大分県の合計29集落が一時孤立状態となった。8月6日8時30分までに、福岡県および大分県を中心として計51万7,900人に対し避難指示や避難勧告が出された。

  • 国民保護法と「緊急事態条項」

地震大国でもある日本が、災害等に対しての法整備を図っていくことは急務である。集中豪雨等の災害発生時、どのようにすれば1人でも多くの国民の命を救うことができるのか。2004年に成立した国民保護法(『武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律』)と、自由民主党の日本国憲法改正草案において大規模な自然災害やテロ等、非常時における政府の権限を定めている緊急事態条項について以下に述べる。

現状の法体制では不十分であるとして、緊急事態条項の議論が活発になったのは東日本大震災発生以降である。東日本大震災発生時にも国民保護法が存在していたが、同法は有事(武力攻撃)の際にのみ適用されるため、東日本大震災はその対象とはならなかった。

国民保護法では「国民は、国民の保護のための措置の実施に関し強力を要請されたときは、必要な協力を努めるものとする」とされている。協力を求めるだけで本当に国民を守れるのか、との議論もあったが、同法制定の際、現行憲法の下で国民に指示をして具体的に仕事をさせることは困難であると判断し「国民の協力」との表現に留まったのである。その後、東日本大震災を経験し、本人を含め周囲の国民を守るために「一定の協力が必要」との考えから憲法上に根拠を置くことが必要と判断され、憲法改正草案において第99条3項(「緊急事態の宣言が発せられた場合には、何びとも、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない」)が設けられた。

これらの内容には「義務化にすることの人権問題」や「歯止めがかからなくなる」点等において改善の余地があるものの、今後議論を重ねる価値はあるのではないだろうか。

【参考文献】

  • 永井幸寿『よくわかる緊急事態条項Q&A いる?いらない?憲法9条改正よりあぶない!?』明石書店(2016)

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