実験の目的
F-1 LCRメータの使用法を理解し、抵抗、コンデンサ、コイルを測定して基本特性の理解を深める。
F-2 オシロスコープの使用法を理解し、実験を通して等価回路の考えを理解する。
実験内容
実験器具
F-1
・受動素子(抵抗、コンデンサ、コイル)
・リード線
・LCRメータ
・ユニバーサル基盤
・アクリル板
・金属版
F-2
・F-1で作成した基盤
・リード線
・プローブ
・ケーブルA
・ケーブルB
・オシロスコープ(図1に示す)
・ファンクションジェネレータ(以下FGとする)(図2に示す)


F-1の実験方法
①リード線の抵抗値とインダクタンス値の計測
- 1m以内で、4種類の長さのリード線(10cm,20cm,30cm,60cm)を選択した。
- すべてのリード線に対して、LCRメータで抵抗値、インダクタンス値を測定した。
- 横軸をリード線の長さ、縦軸を抵抗値あるいはインダクタンス値でグラフ化した。
②各受動素子の抵抗値、インダクタンス値の計測
- 抵抗、コンデンサ、コイルのセットが、A,Bの2種類があり今回の実験ではBを選択した。
- ユニバーサル基盤上にLCR直列回路を実装した。図3に作成した回路の概要図を示めした。

3, ①と②にLCRメータのクリップを接続し、コンデンサの容量値を測定した。 また、測定項目を切り替え抵抗値、インダクタンス値を測定した。
4, ②と③にLCRメータのクリップを接続し、コイルのインダクタンス値を測定した。また、測定項目を切り替え抵抗値、容量値を測定した。
5, ③と④にLCRメータのクリップに接続し抵抗値を測定した。また、測定項目を切り替え容量値、インダクタンス値を測定した。
③平衡平板の容量の計測
二枚の金属板の間にアクリル板を入れ、アクリル板の厚さを変えて容量値を測定しグラフ化した。
F-2の実験方法
①波形の電圧振幅測定
- FG(SFG=2120、図2)から1MHzの正弦波を出力。FGのOUTPUTをオシロスコープのCH1に、FGのTTL/CMOS OUTPUTをオシロスコープの外部トリガに接続した。
- 波形をオシロスコープ上に表示した。そのとき波形が流れていないことを確認した。波形が流れている場合はトリガ設定を見直した。
- オシロスコープのカーソル機能を使って、波形のPeak-Peak電圧振幅を測定した。周波数を1kHz~10KHzの範囲で変えて測定した。
- FGのAMPLつまみを回し、Peak-Peak電圧振幅を1Vにした。
②各素子の周波数特性の測定
1、F-1の②で作成した基盤を用いて、図3の抵抗の両端③-④の電圧振幅について周波数特性を測定した。周波数を1kHz~10MHzの範囲で変えて測定した。
2、図3のコンデンサの両端①-②間の電圧振幅について周波数特性を測定した。
3、図3のコイルの両端②-③間の電圧振幅について周波数特性を測定した。
4、図3の①-④間の電圧振幅について周波数特性を測定した。
③平行平板電極の周波数特性の測定
- 二枚の金属板にリード線(3~5m)をクリップでつける。F-1の①の測定結果を用いて、リード線のインダクタンスの値を求めた。
- 金属板間に適当な厚さの材料を挟んだ。そのときF1の③の測定結果をもとに計算される容量値と上記インダクタンス値との共振周波数2~8MHzになるように注意した。
- FGの周波数を変えて、直列共振の両端の電圧の周波数特性を測定した。
実験結果
F-1
①の実験:LCRメータで測定したリード線の長さと抵抗値、インダクタンス値の関係を以下の表1に示し、それをグラフ化したものを以下の図4、図5に示す。
表1 リード線の長さと抵抗値・インダクタンス値の関係
リード線の長さ[m] | 抵抗値[Ω] | インダクタンス値[μH] |
0.1 | 0.0329 | 0.37 |
0.2 | 0.0509 | 0.46 |
0.3 | 0.0707 | 0.6 |
0.6 | 0.1305 | 0.92 |


リード線の長さが長くなるにつれて、抵抗値とインダクタンス値も大きくなっていったのでリード線の長さと抵抗値、インダクタンス値は比例関係にあることが分かった。
②の実験:LCRメータで測定した抵抗、コイル、コンデンサのそれぞれの抵抗値、インダクタンス値、容量値の結果を表2に示す。
表2 各素子のインダクタンス値、容量値、抵抗値
インダクタンス値 | 容量値 | 抵抗値 | |
コイル | 5.92[μH] | 0 | 0.3482[Ω] |
コンデンサ | -245.8[H] | 103.01[pF] | 3.69~4.01[KΩ] |
抵抗 | 1.57~1.83[μH] | 0 | 9.934[Ω] |
コイルには抵抗値が、コンデンサにはインダクタンス値、抵抗値が、抵抗値にはインダクタンス値があることが分かった。
③の実験:アクリル板の枚数も増やしていき厚さを厚くしていったときの容量値の変化をLCRメータで測定した容量値の実測値と理論値をまとめたものを表3に、それをグラフ化したものを図6に示す。
表3 アクリル板の枚数、厚さと容量値、理論値
アクリル板の枚数 | 厚さ[m] | 実側値[pF] | 理論値[pF] |
1 | 0.005 | 243.3 | 509.76 |
2 | 0.01 | 166.2 | 254.88 |
3 | 0.015 | 125.15 | 169.92 |
4 | 0.02 | 107.12 | 127.44 |

アクリル板の厚さが厚くなるにつれて容量値は小さくなっていくことが分かったので、アクリル板の厚さと容量値は反比例関係だということが分かる。
また理論値は

で求められる。ただし

F-2
②の実験:周波数を1MHz~10MHzの範囲で1MHzごとに変化させて、抵抗、コンデンサ、コイルとLCR全体の周波数特性を調べた時の、抵抗、コンデンサ、コイルの電圧振幅についての測定結果を表に示し、その結果をグラフ化したものを図に示す。
・抵抗についての電圧振幅についての測定結果を表4に示し、その結果をグラフ化したものを図7に示す。
表4 周波数と抵抗にかかる電圧振幅の結果
周波数[MHz] | 抵抗の電圧振幅△V[mV] |
1 | 172 |
2 | 164 |
3 | 156 |
4 | 144 |
5 | 140 |
6 | 137 |
7 | 130 |
8 | 120 |
9 | 110 |
10 | 99.2 |

少しずつではあるが、周波数が大きくなるにつれ電圧振幅が小さくなってきている。
・コンデンサについての電圧振幅についての測定結果を表5に示し、その結果をグラフ化したものを図8に示す。
表5 周波数とコンデンサにかかる電圧振幅の結果
周波数[MHz] | コンデンサの電圧振幅△V[mV] |
1 | 1000 |
2 | 968 |
3 | 888 |
4 | 832 |
5 | 792 |
6 | 742 |
7 | 672 |
8 | 594 |
9 | 502 |
10 | 475 |

周波数が大きくなるにつれ電圧振幅が小さくなってきている。
・コイルについての電圧振幅についての測定結果を表6に示し、その結果をグラフ化したものを図9に示す。
表6 周波数とコイルにかかる電圧振幅の結果
周波数[MHz] | コイルの電圧振幅△V[mV] |
1 | 608 |
2 | 760 |
3 | 816 |
4 | 824 |
5 | 832 |
6 | 816 |
7 | 760 |
8 | 720 |
9 | 664 |
10 | 592 |

電圧振幅は周波数を約5[MHz]までは大きくなっていくが、5[MHz]を過ぎると小さくなっていく。
・抵抗についての電圧振幅についての測定結果を表7に示し、その結果をグラフ化したものを図10に示す。
表7 周波数とRCL回路全体の電圧振幅の関係
周波数[MHz] | RCLの電圧振幅△V[mV] |
1 | 1010 |
2 | 944 |
3 | 920 |
4 | 864 |
5 | 744 |
6 | 528 |
6.5 | 256 |
6.6 | 220 |
6.7 | 208 |
6.8 | 216 |
6.9 | 236 |
7 | 258 |
7.1 | 304 |
7.2 | 344 |
7.3 | 372 |
7.4 | 408 |
7.5 | 432 |
8 | 696 |
9 | 616 |
10 | 552 |

表5により、LCR回路全体の共振周波数は6.7MHzであることが分かった。共振周 波数の理論値は

で求められる。
ただし、
L:F1で測ったコイルのインダクタンス L=5.92[μH]=5.92×10^-6[H]
C:F1で測ったコンデンサの静電容量 C=103.0[pF]=103.0×10^-12[F]
上記のL,Cを代入して計算すると理論値はf=6444950.479[H] ≒6.44(MHz) になった。
③の実験:周波数を1MHz~10MHzの範囲で1MHzごとに変化させて、アクリル板を挟んだ金属板の周波数特性を調べた時のアクリル板を挟んだ金属板の電圧振幅についての 測定結果をまとめて表6に示し、その結果をグラフ化したものを図11に示す。
表8 周波数とアクリル板を挟んだ金属板の電圧振幅の関係
周波数[MHz] | 金属板の電圧振幅△V[mV] |
1 | 1180 |
2 | 1008 |
3 | 820 |
3.5 | 336 |
3.6 | 168 |
3.7 | 164 |
3.8 | 280 |
3.9 | 512 |
4 | 492 |
4.1 | 568 |
4.2 | 628 |
4.3 | 680 |
4.4 | 720 |
4.5 | 768 |
5 | 832 |
6 | 840 |
7 | 880 |
8 | 840 |
9 | 664 |
10 | 568 |

表6によりアクリル板を挟んだ金属板の共振周波数は3.7MHzであることが分かった。共振周波数の理論値は

で求められる。
ただし、
L:1 黒と赤のリード線の長さの合計
リード線 黒:4.0[m]
赤:2.8[m]
合計 6.8[m]
2 F1の「リード線とインダクタンスの関係式(近似式)」に代入
L=1.1143x+0.2532 (F1で求めた近似式)
=1.1143×6.8+0.2532
=7.83044[μH]
=7.83044×10^-6[H]
C:Cの次の定数式より求める。

ただし

よって、求めたLとCをfの公式に代入すると共振周波数の理論値は
f=2655356.992[Hz]=2.655356992[MHz]≒2.66[MHz] になる。
考察
F-1
①の実験結果から、リード線の長さが長くなるほど抵抗値、インダクタンス値は大きくなり、このことからリード線の長さと抵抗値、インダクタンスの関係はそれぞれ比例関係にあることが分かった。そして、図4、図5を見てわかる通り、データが近似直線通りになっているのでこれらのグラフは信頼性が高いことがいえる。また、グラフや近似直線の式から見ても分かる通りy切片が0に無いことが分かる。つまりリード線の長さが0mmの時でも抵抗値、インダクタンス値があることが分かり、ゆえにLCRメータのグリップにも抵抗とインダクタンス値が存在しているということが考えられた。
②の実験結果から、抵抗は抵抗値、コンデンサは容量値、コイルはインダクタンス値から安定した値が計測された。しかし、計測された値は完全にカタログ通りの値と同じにはならなかった。これは発熱などによる少々の誤差とも考えられる。また抵抗では容量値は0(OF)になり、インダクタンス値は不安定であり値が定まらなかった。コイルでは容量値は0(OF)になり、わずかながら抵抗値が存在していることが分かった。コンデンサのインダクタンス値は負の値を示し、抵抗値は不安定であり値が定まらなかった。コイルと抵抗の容量値が0(OF)になったのは、コイルと抵抗は電荷を貯めとくことができずそのまま電流を通してしまうからだと考える。また、値が定まらなかったものは素子の内部で接続が途切れているからではないかと考えた。これらの結果から、それぞれの素子は理想ではそれぞれ自身の働きだけを持っているのが好ましいが、現実は、それぞれの素子は自分の役割以外の働きを持っていることが分かった。これはそれぞれの素子の素材に自分自身以外の素子の素材などが含まれているからではないかと考えられた。
③の実験結果から、二枚の金属板の間に入れるアクリル板の厚さが厚くなる。つまり、二枚の金属板の距離が遠くなればなるほど容量値が小さいことが分かり、このことから二枚の金属板に挟むアクリル板の厚さと容量値の実測値、理論値の関係は反比例関係であることがいえる。図6の理論値と実測値を比べてみるとアクリル板の厚さが0.005mと0.01mと0.015mのときでずれが出ており特に0.005mの時のずれが大きいことがわかる。これは測定の時に機材に触れてしまったなどの何らかの外部的な接触があったか、アクリル板をしっかり挟めてなかったなどのミスから生じてしまったものだと考えられる。
コンデンサの静電容量の公式は

であり、dはアクリル板の厚さ、つまり二枚の金属板の距離を示しているので、公式からもアクリル板の厚さと容量値の関係は反比例関係であることがいえ、この実験結果は妥当だといえる。
F-2
②の実験結果より図7を見ると周波数に対して抵抗の電圧振幅はほぼ一定の値となった。抵抗の周波数特性は周波数によらず抵抗値が一定であるため、この実験結果はほぼ妥当だといえる。
次に図8からはコンデンサの周波数特性は反比例のような形をとることが分かった。コンデンサのインピーダンスZの式は

であり

であるため、周波数が大きくなるにつれてコンデンサのインピーダンスZは小さくなる。よって周波数が大きくなるにつれて電圧振幅も小さくなるので、この実験結果は妥当だといえる。
次に、図9を見るとグラフが曲線になっている。コイルのインピーダンスZの式はZ=ωLであり、

であるため周波数が大きくなるにつれてコイルのインピーダンスZも大きくなる。つまり、電圧振幅も大きくなるのだが、今回グラフが曲線になってしまっていているのでこの実験結果は妥当だとはいえない。
次に、LCR全体の周波数特性を測定することによって共振周波数を求めた。表5と図10より計測値では共振周波数は6.7MHzであることが分かった。理論値では共振周波数は6.4MHzであり計測値とはわずかに異なってしまった。これはコイルにもわずかに抵抗値が存在するからではないかと考えられる。
③の実験結果では、表6と図11より計測値では共振周波数は3.7MHzであることが分かった。しかしながら、理論値では共振周波数は2.66MHzであり大きなずれが生じてしまった。これは平行平板の厚さのわずかな差やリード線に対して手などが接触してしまったりなどの原因から生じてしまったものではないかと考えられた。
結論
今回の実験を通して抵抗、コンデンサ、コイルの特性の理解を深めることができた。また、測定値と理論値で値が違うのは計測を行うときに実験器具に何らかの余分な値が含められていることや、アクリル板の厚さにわずかに誤差があることがあげられ、実測値と理論値を完璧に同じ値にすることは難しいと感じた。また、LCRメータやオシロスコープ、ファンクションジェネレータなどの使用方法を学び、CLR回路には共振周波数といって、位相が逆になる点が存在することを知った。
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