【レポート】ノーマライゼーション

ノーマライゼーション

 

ノーマライゼーションの意味と定義

ノーマライゼーション、”normalization” は、直訳すると正常化、もしくは標準化。現代の社会で障害者、高齢者、子供、そして健常者、すべての人々が分け隔てなく普通に共存できる場所が「ノーマル」とされるとすれば、そのような社会に積極的に向かっていく、また、そのような社会を作り上げていくための活動や運動のことを指す。この運動は、1950年代にデンマークでバンク・ミケルセンによって唱えられた。知的障害を持つ子供の親たちが、障害者施設の中でも人権侵害問題があることを知り、それを改善しようと活動を開始した。バンク・ミケルセンがノーマライゼーションの考え方を体系化し、それを世界へと広めたのがスウェーデンのベンクト・ニイリエだ。彼はノーマライゼーションを「知的障害者の日常生活の様式や条件を社会の主流にある人々の標準や様式に可能な限り近づけること」と定義した。それ以降、ニイリエにより「ノーマライゼーション」という理念や運動が世界各地に広められ、今ではその理念やアイディアを具体化、実現化させるため、バリアフリーやユニバーサルデザインが発展してきているのが今の世界の現状である。日本では1993年に、ノーマライゼーションの思想に基づき「障害基本法」が制定された。

  • ノーマライゼーションの原則

ノーマライゼーションを世界に広めたベンクト・ニイリエはその後、知的障害者の政策の方針にできるよう8つの原則として「ベンクト・ニイリエのノーマライゼーションを8原則」を呈示した。

  • 一日のノーマルなリズム
  • 一週間のノーマルなリズム
  • 一年間のノーマルなリズム
  • ライフサイクルにおけるノーマルな発達的経験
  • ノーマルな個人の尊厳と自己決定権
  • その文化におけるノーマルな性的関係
  • その社会におけるノーマルな経済水準とそれを得る権利
  • その地域におけるノーマルな環境形態と水準

詳細に説明すると、一日の普通なリズムとは、朝起き、たとえ障害があっても洋服を着て、学校や仕事へ向かう。障害を持っていろうと、ずっと家にいるだけではない。当たり前の時間に食事をし、普通の洋服を着、障害があるからと言ってスプーンを使って食べるわけではない。さらに、ベッドで物事を済ませるのではなく、健常者と同様、テーブルに着席して食べる。そういった健常者にとっての「当たり前」を障害者の「当たり前」にもするという考えだ。

一週間の普通なリズムは、一日一日と同じく、毎日毎日仕事に行き、遊びに出かけ、週末には休み、月曜日にはまた仕事へ行く。またそれを季節の変化を通して行い、「ふつう」な一年が過ぎる。障害を持っていようが子供のころはキャンプへ行き、青年期には身だしなみを気にしたりおしゃれをし始めたり、恋をしたりする。大人になれば好きな仕事をし、好きなところに住む。家にこもっているだけではなく、友達と出かけることもある。そして異性とよい関係を育み、いつか結婚をする。誰もが基本的な公的財政援助を受けられ、そのための責任を果たす児童手当、老齢年金、制定賃金基準法のような保障を受け、経済的安全を図り、自由に使えるお金がある。そして、知的障害があるからといってそういった人たちだけ20人、50人、100人集まって施設に住むことはない。そうすることによって地域社会から孤立を防ぐことが可能となる。こういった原則を基に、ノーマライゼーションは世界に広まりつつある。上記のように、「ふつう」や「あたりまえ」を第一として求めているのがノーマライゼーションである。

  • バリアフリーとユニバーサルデザイン

ノーマライゼーション社会の実現の為に取り入れられているのが、バリアフリーユニバーサルデザインである。バリアフリーとは「バリア」つまり障害や障壁が「フリー」、つまりない状態の事を指す。世の中には、建物内に段差などがあるために特定の人が利用できなくなるような物理的なバリア、性別や年齢などのルールで人々を区分しある人だけ利用できなくなるような制度的なバリアなどがある。さらに、手話通訳などがないと耳の不自由な人には届くべき情報が届かないなどの文化・情報面でのバリアや、盲導犬などの立ち入りを断るような言動で相手を傷つける意識上のバリアも存在する。バリアフリーを目指すことにより、高齢者でもなんらかの障害を抱えている人にとっての身体的そして精神的な障壁を取り除くことができる。日本ではバリアフリー化を進めるために2006年12月から「バリアフリー新法」が制定されている。この方針はデパートや劇場、ほてるや共同住宅などの建築物で「利用円滑化基準」への適合を義務図けるものである

すでに存在する障壁を取り除いて高齢者や障害者が自立した生活を送れるようにするバリアフリーに対し、ユニバーサルデザインとはものを生み出す計画の段階で障壁を作らないようなデザインにするというものである。ユニバーサルデザインは1992年にアメリカのロナルド・メースが「universal」つまり「普遍的な・万能の」という考え方を提唱したのが始まりだった。例として挙げられるのが紙幣の左端に特殊印刷されているマーク。これは指で触るだけでも識別できるようになっている。さらに駅などの共通交通施設で見られる点字や点字ブロック、あらゆる高さで設置されてある水飲み場や自動販売機など、誰一人不便なく使えるような社会環境を計画していくのがユニバーサルデザインだ。

この二つを取り入れることによってノーマライゼーションの理念である「障害を持つ人たちが地域社会の中で差別されることなく、普通に暮らせるようにする」というものを実現すること可能となる。

  • 教育との関連性

ノーマライゼーションにより、多くの人々が普通な暮らしができるという理念を考えると、高齢者や障害者だけでなく子供にも目を向ける必要がある。文部科学省によると、「特別支援教育」とは障害のある乳児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取り組みを支援するという視点に立ち、乳児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、そのもてる力を高め、生活や学習上の困難を改善または克服するため、適切な指導および必要な支援を行うもの(文部科学省)と定義されている。平成19年から特別支援教育が学校教育法に位置づけられたため、現在の日本ではすべての学校において、障害のある乳児児童生徒の支援をさらに充実していくことになっている。発達障害、知的障害、身体障害、何の障害であっても、障害を持つ子供を支えるという面では、障害があっても障害のない子供と同等に教育を受けることができるよう適切な環境を整えることがノーマライゼーションの目指すべきところになっている。しかし、そこへたどり着くには、各児童とその児童の持つ障害を理解し一人一人のニーズにできる限り応える、そして「普通に」それを行うことが求められてくる。

実現させる為に設けられている盲学校・聾学校・養護学校の障害種別をなくし、発達障害に対する教育的支援を含めた「特別支援学校」。しかし、これを設けることは、障害児を対象に、専門的な教育の取り組みは差別であり、隔離であるとし、ノーマライゼーションの理念とは矛盾が生じるという混乱が生じた例もある。だが、これはあくまでも障害があっても、障害のない子供と同等に教育を受けることができる適切な環境条件を整えるという点の「同等」を単に同じ教育内容を同じ教育の場で、同じ方法で行うというように解釈することによって生じる混乱で、より多くの障害児が障害や障壁を感じずに勉強ができるという点では、現代の日本社会は特別支援教育を設備することによってノーマライゼーションの活動に貢献できているといえるのではないだろうか。

【参考文献】

ノーマライゼーションと特別支援教育

http://www5e.biglobe.ne.jp/~asai_/31117875/   (2019 6/10閲覧)
ノーマライゼーションの考え方

http://kaigosyokuinkiso.seesaa.net/article/217526157.html  (2019 6/5閲覧)
社会福祉キーワード ノーマライゼーション

http://www.tfu.ac.jp/tushin/with/200803/01/03.html  (2019 12/8閲覧)

ノーマライゼーションの意義と影響
http://kaigosyokuinkiso.seesaa.net/article/219632278.html (2019 5/4)

ノーマライゼーション理念の課題
http://kaigosyokuinkiso.seesaa.net/article/219811893.html (2019 4/7)

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