【レポート】世界各国の医療体制と問題

世界各国の医療体制と問題

2020年に入り、コロナウイルスが世界を恐怖に陥れようとしている。そこで、気になったことがある。世界各国の医療体制はどうなっているのだろうか。

諸外国の医療福祉に関わる問題を分析し比較する事で、様々な事が可能となる。主に3つ挙げると「諸外国の注目すべき方法を自国に取り入れる事が可能になる」「諸外国と比較する事で自国の体系を批判又は賞賛する事ができる」「各国の医療状況をそのまま医療提供の様々な方法論に分析する為の実験場として把握・研究する事が可能となる」だ。今回、世界の医療福祉の課題に焦点を当てて考察していく。

  • アメリカ

アメリカの医療制度の課題は山積みである。世界一の医療技術と医学教育を誇るとして世界に知られているアメリカ。しかし、現状は10人に1人が医療保険のないままに放置されている。アメリカでは、患者やその家族のニーヅが満たされていない事が多い。なぜなら、入院期間の制約や受けられる治療までも制限がかかっているからだ。また、医療費が膨大な額にまでのぼり、米国経済全体が脅かされるところまできている。今後、さらに高齢化が進むと推測されるアメリカで、この問題を解決していくのは容易な事ではない。

アメリカの医療制度の運営は各州政府の権限に委ねられている。各州が異なった運営制度を採用した結果、地域格差が大きくなり、費用や介護内容の問題が山積している。アメリカも日本と同じように、国民の大半は雇用されている企業から医療保険の給付を受けている。しかし、アメリカでは企業が従業員に医療保険を給付すべき法的な義務はない。従業員への保険給付は全て企業の民意であり、中小企業の様な大きな組織を持たない企業はこれを給付しないところが多い。これにより、小・零細企業に働く労働者や不完全雇用にある低所得労働者、あるいは失業者などは医療保険を得られない場合が多い。これらに当てはまる人々は、弱者として扱われ「世界1の医療技術と医学教育を誇るとして世界に知られている自国」の医療を受ける事ができないのだ。この医療保険を持たない無保険者の数は約3千7百万人にのぼるといわれている。この無保険者問題を生み出したのは「世界に誇る質の高い医療」から発生した自由競争の産物である。

アメリカでは、医療は巨大なマーケットである。アメリカの医療は1960年代から急激に成長し、GDPの7分の1を医療費が占める。逆を言えば、医療に費やされている財源の無駄を省く事が出来れば、政府が抱える財政赤字を大幅に軽減する事が可能となる。アメリカの国家財政の建て直しをはかる為には、医療問題の解決が必須。医療制度が統一されていない事から生み出された「地域格差」と「高齢者の増加に伴う医療費の更なる増加」がアメリカの医療制度に関わる大きな課題である。

  • イギリス

イギリスの医療の特徴は、財源のほとんどが国の一般会計から出ている事と、運営が基本的には国の独占供給体制にあることである。これに加えて、世界で初めて医療ソーシャルワーカーが誕生した国であることが特徴だ。イギリスの医療福祉が抱えている問題は、EU統合の実現により、イギリスの開業医がEU共通開業権を利用して、収入の高いドイツやフランスに流出し始めていることである。その数は3万人近くにのぼるといわれ、不足した人材の代行としてインド人の医師が予想されている。

イギリスでは1948年から国民保険サービスであるNHS(National Health Service)が実施され、これまで限られた国民を対象に限られた給付のみが提供されていたのに対し、すべての国民がほとんどの医療サービスを無料で利用できるようになった。しかし、イギリスは1970年代頃、深刻な経済危機に直面した。これに対し、当時の首相であるサッチャー保守党政権は福祉国家体制に対する改革を実施することで福祉に対する国の役割を軽減し、民間営利部門を積極的に活用し制度全体の効率化を試みた。しかし、ここから公的財源が民間へと流れるようになり、民間の福祉施設は増加したが、サービスの質を監視するシステムがなく、NHS、地方自治体、民間施設との連携の不十分さが浮き彫りとなった。ここから、ソーシャルワーカーは患者の入院期間の短縮に対するプレッシャーを受けるようになった。サッチャー政権による医療費の削減により、入院患者待機問題・医療従事者の士気の低下といった問題を引き起こす結果となった。

1997年から新しい政権であるブレア政権がNHSの新たな改革に乗り出した。NHSでは、看護師による電話医療相談を開始し、1999年の4月から現在で40%の地域をカバーしている。救急室の整備には1億5,000万ドルを投資して、国民のプライマリケアの不備を解消しようとしている。サービス向上の為に不必要な入院の防止・早期退院の促進を目指している中で、中間ケアも提案される事となった。ブレス政権はソーシャルワークの教育制度にも改革を加え、ソーシャルワーカーの資格であった学位レベルの資格を格上げし、教育訓練期間を延長した。しかし、この動きとは反面、現場ではソーシャルワーカーの人材確保が難しい状況が続いている。要因としては、賃金の水準が低い・キャリア形成の道筋がないことなどがあげられる。

イギリスの医療福祉全体を向上していく為にも「イギリス人の開業医がEU共通開業権を利用して、ドイツやフランスに流出する事をどう食い止めるか」と「ソーシャルワーカーの人材確保」に全力を尽くしていく必要がある。

  • スウェーデン

スウェーデンをイメージした時に「福祉大国・福祉国家」とイメージをする人が多いのではないだろうか。しかし、スウェーデンの現状を調べていく中で、制度疲労の影が見え隠れしてきた。

スウェーデンはイギリスと同様に1948年からNHSが採用され、全国民が登録されるに至った。老人医療に対して4部門(老人専門病院・老人医療施設・通院医療施設・在宅医療)に分類・統轄され、老人への無料診療を実施している。高齢者福祉も医療の65%に対し35%が費やされ、年金も所得の70%が支給される。2012年時点でのスウェーデンの65歳以上の人口は160万人で、全人口の18%にあたる。推測によると、50年後には270万人に増え、人口の約27%を占めるとされている。2060年には国民の4人に1人が年金受給者になると推測される。それゆえ、現在の社会保障費の合計GDP費は49%と高率であり、国民租税負担率は53%と世界最高だが、還元率は67.3%にとどまっており、財政負担の限界にきている。

スウェーデンの医療政策の特徴は、23ある県と284の市町村を地方行政が主権を持っている点だ。国庫負担は14%にとどまり、主に地方行政が地域特性に基づいた医療を施行している。92年に実施されたエーデル改革で高齢者へのサポートが強化された。24時間在宅介護サービスにより、介護を必要とする高齢者も自宅で生活しやすくなったこと、社会的入院患者が減少したこと、住居の収容数が増加し、高齢者へのサポート体制が強化された。しかし、エーデル改革で医師・医療機関への改善はされなかった。医師数は人口950万人に対して約3万人、10万に当たり302人と過剰だが、自由開業医はわずか5%で95%は全雇用の俸給支給医師であり、これらの医師の平均年収は10万ドルにしか過ぎないために病院での勤務時間は短い。ここから医師は多いが、開業医は少ないという問題が出てきた。

「福祉大国」のスウェーデンでも、高齢者の増加による財政負担で限界が見えてきている。更に、最近の経済不況を受けてGDPが向上せず、医療費・介護費削減の必要性、自己負担の増加が必要となってきているなど、福祉国家でさえも抜本的な改革が必要となってきている。

  • 日本

最後に我が国、日本ついて。日本の医療制度の特徴として ①「出来高払い中心であること」②「患者が自分の望む医療機関の診察を自由に受けられる事」③「国民皆保険(皆が保険制度に加入し、重い負担なしで診断・治療が受けられること)」があげられる。これらが今の日本の医療制度を支える大きな柱となっているのだが①:利益を生み出す為に、無駄な医療や投薬等を引き起こしやすい ②医療機関が役割分担できない ③:少子高齢化の影響を大きく受けるといったデメリットを含んでいる。オーストラリアなどは医師の紹介がないと専門的な病院に行くことができない。まずは、皆同じ病院に行き診察を受ける。そして、紹介された病院に行くという流れ。

様々な問題がある中でも日本の医療は、生活水準・公衆衛生の向上に努め、死亡率の低さは世界一の長寿大国。日本は医療の質、サービスも大変優れている。しかし、医師の不足、高齢化の更なる発展、医療費の増加。これら多くの課題を乗り越えられる様、更に医療福祉を発展させていかなくてはならない。

更に深掘りしたい方は、下記の参考文献を読んで見て下さい!

・西村由美子編『アメリカ医療の悩み―どこに問題があるか』サイマル出版会(1995)

・渡瀬輝夫『世界の医療事情リポート―そして日本を考える』メディカルトリビューン(2010)

・池上直己『成熟社会の医療政策―イギリスの選択と日本』保健同人社(1987)

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