【レポート】高知県唯一のプロ野球球団高知ファイティングドッグスの地域密着の社会貢献について

高知県唯一のプロ野球球団高知ファイティングドッグスの地域密着の社会貢献について

今回、プロ野球独立リーグの一つである四国アイランドリーグに属する高知ファイティングドッグスが取り組んでいる地域密着の社会貢献について記述する。

  • なぜ、このテーマを扱うか

四国の過疎化の現状として、四国四県では人口流出が止まらず少子高齢化率が全国平均を大きく上回っている。この問題が注目を浴びている。高知県だけでも高齢化率は32%人口増減率は0.96%となっている通り一気に過疎化が進み県の財政も悪化している。香川県は小豆島などの観光スポットを活用し近年観光業では成功を収めつつあるが、それでも県魅力度ランキングでは愛媛県が最高の27位、高知県は32位、香川県は34位、徳島県に至っては46位と散々な結果になっている。
その中で高知ファイティングドッグスは、四国の中でもいち早く地方都市の少子高齢化に目をつけプロ野球チームでありながら高知県の地域計画の中にある「民間団体が地域社会の一員として社会貢献活動を推進して」いくことの一環として地域貢献活動を行なっている。この活動が社会貢献としての重要な役割を果たし、注目となっている為、記事にすることにした。

  • 独立リーグとは何か

プロ野球12球団(NPB)以外で独自の経営を行い、スポンサーを募り、リーグ戦を行なっている球団のことを指す。四国アイランドリーグは、2005年に西武などで活躍した石毛宏典によって少しでもNPBに入るチャンスを創出するため12球団の本拠地以外の都市で独自採算のプロチームを作りたいという思いから創設された。NPBと同じプロチームではあるが、資金力の差は100対1となっており、 NPBは年間100億円の予算、独立リーグは平均で1億円の予算となっている。選手の月収も月10万ほどであり、ほとんどの選手はアルバイトで生計を立てている。また球団も赤字を抱えながら経営をしているところも多く実際に消滅してしまう球団も多数存在する。
その中で13年間高知を本拠地に構え、黒字採算を何度も叩き出した背景には社会貢献活動による地域の人たちとの信頼関係の構築があった。

  • 一つ目に行ったこと

高知県の中でも、特に過疎化が進んでいた越知町と佐川町に本拠地と練習場を構えた。これには、過疎地域だからこそもつ課題を克服する目的が含まれていた。二つの街はともに過疎化が進んでおり、越知町に至っては小学校は一校のみで児童数は360人程度しかいなかった。また、公共交通機関が発達していないため車移動が基本で子供達が運動をする機会も失われつつあった。この状況の中で越知小学校の五年生のソフトボール投げ、50メートル走の平均値が46,5, 44.0 (2012)と全国平均を大きく下回っていた。そこで、町の企画課が高知ファイティングドッグスの選手とトレーナーによる体育の授業を行なってほしいという要望があり、月一回選手とトレーナーによる特別授業が行われた。するとプロの選手、トレーナーの的確な指導と高い運動能力に子供達はいたく感激を受け、たった一年でソフトボール投げ49.9, 50メートル走46.9と全国平均に近づいた。翌年には、町対抗の運動会において5校もの小学校を構え児童数は700人を超える佐川町の小学校に、わずか360人程度の越知小学校が総合リレーで優勝したのだ。これはたかが小学生のことだと感じるかもしれない。しかし、高齢化が進む町においては小学生の活躍は地元の高齢者にとって大きな希望になる。まさに、我が子を見るような気持ちなのだろう。また、小学生にとっても実際にプロのスポーツ選手に触れ合うことでスポーツに興味を持つきっかけとなる。この取り組みの中で、子供達が運動をする時間が増えるだけで成功と言えるのではないだろうか。さらに、この成果は球団の力添えがあってのことだ。参考文献の中にこの活動についての記述がある。『地域貢献とはなんなのか。イベントを手伝って盛り上げたり、どこかの施設を訪問したりというのもまた違うんですよね。球団が、街に根付いたというのは、もう間違いありません。』 喜瀬雅則 「牛を飼う球団」 小学館 2016 p47 10~13項 この言葉からも分かる通り、球団が地域に根ざし社会貢献活動を行うことによって世代を超えた社会関係資本を築けたのではないだろうか。

  • 二つ目に行ったこと

球団は高知県の課題の一つである、耕作放棄地の問題にも注目をした。高知県では農業従事率が全国二位と高いがその一方、耕作放棄地は4000ヘクタールと東京ドーム約800個分にも及ぶ。その敷地の一部を球団が市から無料で借り、選手と球団職員が野菜を育てることにした。長い間耕作されていなかった土地は、自然の回復力で土が栄養を取り戻し、以前より耕作に適した土地になる。この活動の一環として、選手と地元の幼稚園の児童と一緒に田植えを行い子供達に農業体験の機会を創出した。また、地域の人たちが選手と一緒に野菜を管理してくれるようになり、地域を含めた一大プロジェクトにまで発展した。そして最後は、選手、児童、地域の人たちと一緒に育てた野菜を食べるという食育を地域密着で行うことにより、球団の認知度を上げることに成功しただけでなく、球団の食費を削減することにも成功した。さらに野菜の一部を球団の関連商品にするために地元の人たちを収穫のアルバイトとして雇用した他、実際に商品化するバジルソースを身体障害者施設で作ってもらうことで障害者の方の社会進出も後押している。

  • 三つ目に行ったこと

球団は野菜だけではなく、高知農業高校から牛を一頭買い、球団で育てることにした。これは、球団の知名度を上げるための行動という側面が大きいが、それ以上にもともと酪農も盛んだった高知を球団が牛を飼うことによって、高知の酪農の認知度の向上、また先述した食育にもつなげる目的でオスの子牛を三万円で購入した経緯がある。初めは、地元の酪農家や農家の人たちは反対していた。酪農は素人ができるほど甘くないからだ。しかし、専属の飼育員をつけ、毎日牛の世話をしている内に地域の人たちも協力してくれるようになった。飼育小屋の設置、餌やりなど地域の人たちの指導の元で飼育をしていくと、次第に球団と地域の絆が生まれてくる。すると試合に足を運んでくれる人も増えるようになった。ただ、これの本当の目的は、観客の増員とともにこの育てた牛を最後は食肉にし、球団がフードメニューとして販売することだ。球団と地域の若い人たち、高齢者が一緒になって育てた牛を食すことで、特に若い人たちにとって「命」をいただくということの意味を理解してもらう。これは普段は経験することのできない貴重な学びの場であるばかりでなく、世代を超えた交流も育める機会になる。 中には肉を食べられない人や涙を流しながら食した人もいたそうだ。実際飼育費は二年間で80万円だったが、売り上げは120万に達し黒字であった。これは財政面でも教育面でも成功だった。

  • 最後に

このような取り組みの中で、行政だけが地域の人たちをつなぎ、世代を超えたつながりを創出することは不可能であるということだ。よくスポーツは人々は一つにすると言われるがこれは間違いではない。プロのスポーツチームがある所は、地域の連帯感が強い。地域の人たちが、地元のチームを応援するということは地元に愛着を感じ、誇りに思えるようになるという側面もある。地域での幸福を実現するために必要なことは、人的資本、社会関係資本、金融資本、文化資本の四つが必要であると言われるが、これら四つを生み出すのは基盤の整った社会保障が必要であるのは間違いないが、それと同等に、地元の人たちが世代を超えて繋がることのできるものがあるのかが大事になってくる。こういった例は広島県を見ればすぐに分かるであろう。広島県民は地元球団の広島東洋カープに強い誇りをもち、世代を超えた人々が応援に行き、帰りには地元の居酒屋などで酒を酌み交わすシーンが日常生活の一部である。この日常にこそ繋がりや絆が創出されるはずだ。行政ではカバーしきれない地元の中の関係構築を担うのが、プロスポーツチームの役割である。

【参考文献】
喜瀬雅則 「牛を飼う球団」小学館 (2016)

岡田浩人「地域に根付くもう一つのプロ野球—BCリーグで汗を流し、笑い、ともに涙する野球人たち」(2014)

栃本一三郎編著「新しい視点で学ぶ社会福祉 保育士を志す人のために」(2007)

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