【レポート】川崎市中1男子生徒殺害事件:学校における相談援助

「川崎市中1男子生徒殺害事件」学校における相談援助

川崎市中1男子生徒殺害事件

 皆さん、覚えていますでしょうか?2015年に川崎市で中学1年生の少年がカッターナイフで何度も切りつけられ後に、殺害された事件。加害者も未成年の少年達でした。今まで、2記事ソーシャルワークや相談援助に関する記事を取り上げたのですが、実例に関する記事はまだ0記事。なので、今回は実例に関する記事を書きました。実例の選定を迷っていたのですが、上記事件に決めました。個人的に非常にインパクトのある事件で、読者の皆様にもこの事件に関して再度考えて頂きたく「学校における相談援助」というテーマで取り上げていきます。

  • 学校における相談援助 

今回、ケースワークの中でも相談援助について。相談援助とは「主に面接によって本人の抱えている問題解決を図ったり、ニーズを満たしたりする事によって問題解決の手助けを図ること」。そして、相談援助の中でも学校における相談援助を取り上げる。学校に限定する理由としては、川崎市の少年殺害事件がとても衝撃的で残念だったからである。

一般的なソーシャルワーカーはクライアントのニーズを見つけ出し、そのニーズに対して的確に知識や経験を有してアプローチしていく必要がある。そして、そのクライアントのニーズに対して、倫理綱領の内容も着実に果たされる事によって最高のSWの役割が果たされる訳である。しかし、川崎市の少年殺害の事件ではSSWの役割が一切果たされていなかった。学校におけるソーシャルワーカーはスクールソーシャルワーカー(SSW)と呼ばれている。SSWはアメリカで誕生し、子どもたちが抱える多様な状況に対し学校教育分野でSWを実践していく事が求められる。事件が起きる前から被害者の少年が加害者側の集団から暴力を振るわれていた事や、他にも様々な被害を受けていた事は把握されていた。これらの問題から被害者の少年が学校に来なくなっていたことも確認されている。本の中でJennifer Clancy は「SSWは、抑圧と直接闘う実践的アプローチを生み出さなくてはならない」と述べている(Jennifer Clancy 1998:10)。しかし、今回の県に関しては川崎市各区に1人、合計7人配置されていたSSWが動く事はなかった。先ほども述べたが、SWはクライアントのニーズを見つけ出し、それに対して解決の為の援助をしていくことが役割な訳である。川崎事件では、クライアントが問題を抱えていることは明白だった。にもかかわらず、SSWが全く機能していなかったという事は重大な問題。倫理綱領の中の「最良の実践を行う責務」などが果たされていれば、命が救われていた可能性がある。SSWの担う役割は非常に大きい。

今回の事件のポイントは「連携が上手く取れていなかったこと・相談援助が行われていなかったこと」が致命傷となった。教師が自宅訪問なども行っていたが、情報がSSWまで共有される事はなかった。SSWは教育の分野で活動を行うが、教師やスクールカウンセラーとは役割が異なる。しかし、SSWだけで行動していく事は難しく問題解決をしていく上で効果的ではない。その為、教師やスクールカウンセラーと情報を共有しながら連携していく必要がある。他にも問題点を取り上げると、「犯罪においては、個人の異常さばかりが強調される。この見方にもとづくと、異常な人間を取り除けば問題が解決する事になる。世間にとっては事件を起こした者を排除すれば、社会から異常な人間が一人いなくなるから、世の中が浄化されるという事。しかし、この考え方は環境的な条件を全く無視している。」(山下 2006 : 12)とマスメディアの報道が指摘されている。

  • SSWがどのような相談援助を行っていけばよいのだろうか

例えば、不登校の子供たちの場合「学校という環境が子供たちのニーズにあまり応えていないという状況が背景にある。従って、彼・彼女らに我慢や未熟といった言葉を投げかけても解決しない。むしろ、学校をこどもたちにうまく適合させる、すなわち子どもたちのニーズに合わせて変えるという発想が求められる。人と環境の両方を視野に入れて働きかける必要がある(山下 2006 : 15)とされている。つまり、様々な角度から個人のニーズにアプローチしていく必要がある。生徒が生活者だと捉えた場合、社会、心理、教育、家庭、様々な要素からニーズを見つけ出していく事を学校の相談援助では重視していかなくてはならない。また、クライアントの情報を交換する為にも様々な職種との連携が必要となってくる。連携を取りながら相談援助を行っていく事で、問題解決へと繋がっていく。

  • 活躍が期待されているSSWだが、様々な課題を抱えている

まずは「全校配置になっていないこと」。効果的に効率的にSSWを展開していく為には、まだまだ人数不足の状態。相談援助を行っていく中で、情報共有する為にも他の機関の人とも連携していく必要があると述べたが「管理職の人との連携の割合が低いこと」も問題。管理職の人とも密に連携しなければ、情報共有の質が落ち、質の高い相談援助も行えなくなってくる。この様に、SSWに多くの課題は残っている。ただ、日本のSSWはまだ始まりの段階である。一つ一つを確実に克服し実践していけば、より良いスクールソーシャルワークの実践・学校における相談援助の質も高まってくると期待している。被害者の少年、加害者の少年を取り巻いているのは同じ社会。その社会の中に私たちも属している。他人事ではなく、皆で「この2020年の社会を更に良くするにはどうすれば良いのか?」と考え行動する事が求められる。

【参考文献】

山下英三郎『相談援助—子供たちとの関わりを中心に』学苑社(2006)

山下英三郎『スクールソーシャルワークとは何か  —その理論と実践— 』現代書館(1998)

石川瞭子『スクールソーシャルワークの実践方法』青弓者(2009)

山野則子・野田正人・羊羽利美佳『よくわかるスクールソーシャルワーク』ミネルヴァ書房(2012)

荘村明彦『スクールソーシャルワーク実践事例集』中央法規出版株式会社 (2014)

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