【レポート】介護とは何か

介護について

「介護」というワードから、高齢者介護をイメージ人が多いのではないだろうか。このイメージが定着しすぎていることによって、日本社会における福祉に対するイメージも「高齢者介護」に限られているように思う。しかし、実際のところ介護は高齢者に対して行うものとは限らない上に、高齢者介護の中にも様々な種類やケースが存在する。その為、「介護とは何か」という問いに対する答えを探すにあたって、まずは「介護=高齢者」だけではないということを現代社会に発信する必要がある。また、「助ける」ことが介護という概念も定着しているが、理想の介護は利用者が「自立」できることである。今回の記事では、「知られていない介護の対象者」と「助けることが介護ではない」の2つをテーマとして、本当の介護とは何かを考えていく。

まず、障害者介護について。通常、介護は高齢者に対する支援という印象が強いが、障害者も介護の対象者となるケースが多い。しかし、この「障害者」という言葉そのものにさえも多くの意味があり、何種類もの障害やケースを指す。肢体不自由である運動機能障害者、または知的障害者も介護の対象となる。さらに、精神障害者や、内部障害、つまり内臓機能障害者、そしてコミュニケーション障害者の人も介護の対象となる(中島、2001)。このように「障害者」だけでも5種類もの介護技術が必要となってくる

運動機能障害者は、脳卒中の後遺症や脳性麻痺により自らの身体を動かすことが困難なケース。骨髄の損傷や、骨や関節などの疾患により、身体を動かすにあたって必要となってくる身体の部分が動かせない場合もある。又は、神経などの病により、止むを得ず手足を切断するケースもある。運動機能障害者だけでもこれだけの原因が想定され、当事者によってそれらの病気や疾患になる理由も異なってくる。ある年齢まで健康に生活していた人が、ある日突然事故で上記のどれかを経験し、結果として肢体不自由となったケースもある。介護を受けるまでのその人の人生が異なる為、介護の程度や、介護に対する意識も当たり前のように一人ひとり違ってくる(小池、2006)。それを念頭に置いた上で、「身体障害者」と、一括りにしては本当の介護とは言えない

知的障害者の場合、身体障害者と比べると原因となりうる要素は少ないが、これまで知的障害を抱えた状態でどう生活してきたのかは、当事者によって全くと言っていいほど違うであろう。また、IQによって知的障害の重度が定められているが「重度」だからといって重度知的障害者の方全員に同じ介護プランを用意しても、これまでの生活背景がケースバイケースであるため、通用しない(中島、2001)。その為、知的障害者の場合、介護のパターン化が難しい。

精神障害者の場合も、精神障害に陥るまでの道のりが当事者によって異なるため、介護内容をパターン化することが大変困難である。また、精神障害者の多くは「助けて」ということを最も大きな課題として抱えている為、介護をする側に対してもなかなか心を開けないことが考えられる。

内部障害者は、心臓機能や腎臓機能、呼吸機能、そしてストーマ造設など、いくつもの種類が存在する。内臓機能障害の場合、介護技術だけでなく、内臓機能に関する医療的知識も求められてくる。そのため「介護をする」と言っても、介護技術、医療知識、そして患者一人ひとりに寄り添える心を持たなければ成立しない。

コミュニケーション障害は、主に視覚障害者と、聴覚・言語障害者の二つに分けられる。コミュニケーション障害の場合も生まれつきの障害か、なんらかの事故によって患ったものなのか、当事者一人ひとりの背景に寄り添う必要がある。

また、視覚や聴覚の障害もいくつものレベルに分けられる。障害の種類によって違った介護内容を用意し、介護技術を身につけなければならないが、それ以上に、当事者によってその障害を抱えている理由や背景が違うこと、そしてその背景が違うため、介護に対する意識やリハビリテーションに対する積極性も異なってくるということを理解しなければならない。介護という言葉から「高齢者」の次に連想される「障害者」だが、その障害者という一言にもこれほどの種類が存在する

次に、「高齢者介護」についてだが、高齢者介護そのものも枝分かれしている。移動障害がある高齢者や、視覚障害のある高齢者、そして認知症高齢者それぞれによって介護の方法が異なってくる(中島、2001)。加齢により骨がもろくなり、筋肉も衰え、運動機能が全体的に衰えていく高齢者は、場合によっては食事や歩行、排泄など、単純なADLの動作もままならない。しかし、失われていない機能を活かせるように、介助しすぎないことも「介護」に含まれてくる。視覚障害のある高齢者は程度によって介護の内容も大きく変容する。しかし、高齢者であっても視覚障害のある高齢者は、コミュニケーション障害者に対する介護と少し関連付けられる部分がある。その為、障害者に対する介護技術を、高齢者に対しても活かせる場合もある。

最後に、認知症高齢者に対する介護だが、認知症介護は現在大きな課題とされている。認知症高齢者の場合、移動や特定の行動の際の介護だけでなく、日常的に「見守る」・「観察」されることが必要となってくる(認知症ねっと、2016)。そのため、介護技術はもちろんだが、日常的に寄り添って介護するため長時間にわたっての介護となるのが認知症介護である。また、認知症高齢者の介護の原則の一つとして次のことが言われている;

「高齢者にまちがいや状況に合わない言動があっても受け入れ、高齢者に合わせながら対応し、その心を理解しようと努めること。」(中島、2001. P157 より引用)

この言葉は認知症高齢者の介護の原則として掲げられているが、高齢者介護全般において重要となる概念ではないだろうか。「高齢者介護」と一括りにされがちだが、実際には様々なケースが存在し、各自異なる形で高齢者は戦っている。かつて出来ていたことが出来なくなったり、かつて理解できていたり認識できていたものが急にわからなくなったり、様々な形で不安と葛藤と戦っている。

最後は自立について。これまでに述べた様々なケースの障害者も、高齢者も、「助けてもらう」ことがゴールではない。障害児、障害者、高齢者によって「自立」の課題が違ってくると同時に、身体的自立精神的自立社会的自立と、自立に関しても三つに分かれているが、共通点として「自立支援」が最終的な目標となっている(日本自立支援介護学会、2016)。障害者の場合、社会的自立を一番の課題としており、それを完結できるように精神的自立も求められてくる。また、高齢者の場合は精神的自立や社会的自立ではなく、これまで行うことができていたADLをもう一度自力でできるようになるために身体的自立を一番の課題としている(日本自立支援介護学会、2016)。福祉に携わる人間でないとイメージされ難い「自立支援」という概念だが、これを重視することによって、自立心の回復が期待でき、より人間らしい生活が送れるのではないか。

最後に、「介護とは何か」という問いに対する答えだが、「介護の対象者は高齢者とは限らないこと」「高齢者介護といっても様々なケースが存在すること」そして、「助ける・支援することだけが介護ではなく、『自立支援』も重要であること」これらの点を理解することが介護だと考える。現代社会では以上の三点が十分に知られていない上に、誤った介護のイメージが根強く定着してしまっている。その為、社会福祉という分野を広める際に、「介護」についての誤ったイメージも払拭することが現代の課題なのかもしれない。

【参考資料】

石井三智子著「介護のためのソーシャルワーク」一橋出版株式会社 (1997)

小池妙子編著「介護概論」建帛社 (2006)

田中安平著「介護の本質」インデックス出版 (2005)

露木敏子著「痴呆介護」一橋出版株式会社 (2001)

中島紀恵子,他「介護福祉の基礎知識・上」中央法規 (2001)

ニルス・クリスティー著 立山龍彦訳「障害者に施設は必要か:特別に介護が必要な人々のための共同生活体」東海大学出版会 (1994)

【Web参照】

日本自立支援介護学会「自立支援介護とは」http://jscil.com/concept.2016/07/10

認知症ねっと「認知症のケアと介護」https://info.ninchisho.net/care.2016/07/10.

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