【レポート】ジャン・ジュネ『女中たち』

【レポート】ジャン・ジュネ:女中たち

『女中たち』について

『女中たち』は、フランスの劇作家ジャン・ジュネによる1946年初演の劇作品である。この作品は、演劇の中にもう1つの劇を入れ込む劇中劇の形式をとっている。登場人物はソランジュとクレールという2人姉妹の女中と、その女主人の「奥様」である。女中2人は奥様が留守の間に屋根裏部屋で「奥様と女中ごっこ」をする。日によって役は異なるが、今夜は妹のクレールが奥様を、姉のソランジュがクレールを演じている。ドレスを着て「ごっこ」をし、最後に奥様を殺そうとするが、その直前で本物の奥様が帰宅し、この日も奥様を殺す儀式を最後までやり通すことができない。しかし「旦那様」が釈放されたという知らせを受け、再び本物の奥様がお屋敷を留守にしたとき、2人は「ごっこ」を再開する。クレールが睡眠薬が入った菩提樹花のお茶を飲み、奥様として死んだところで幕が下りる。

重要なポイント

 この作品においては、”相反するものの共存”が重要なポイントとなる。これは、2人が「ごっこ」の際に「憎んでおります」と言いながらも奥様の美貌を称賛する箇所に顕著である。2人は奥様を憎んではいるが、その美しさや輝かしい所有品の数々、時折見せる優しさを慕い、憧憬の念を抱いている。

 これは、ソランジュとクレールにおいても同様である。2人は本物の奥様を殺せずにいることをさまざまな言い訳によって互いのせいにしたり、牛乳屋の話題で言い合ったりして頻繁に対立するが、その一方で互いにみじめな生活を慰め合ったり、いかにも姉妹らしくソランジュがクレールを寝かしつけようとする場面もある。

 さらに、登場人物のみならず、舞台設定においても”相反するものの共存”が指摘できる。2人は自分たちの暮らす屋根裏部屋に複雑な思いを抱いている。屋根裏部屋は2人にとって現実の世界であり、みじめで汚らしい場所ではあるが、反対に、屋根裏部屋こそが彼女たちの私的な空間であり、私的であるからこそロマンを感じることができるのである。

【参考文献】

ベルナール・ドルト(著) 渡辺守章(訳)「ジュネ、あるいは演劇との闘い」『筑摩世界文学大系 85 (現代劇集)』筑摩書房(1974)

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