【レポート】夏目漱石

夏目漱石について

  • プロフィール

夏目漱石の本名は夏目金之助教師を経験したのち米国に留学し、英文学を習得することとなる。この留学という点に着目してみれば、森鷗外同様に海外文学に魅了され、帰国後に海外文学についてを周囲に知らせたことで、日本文学というジャンルの中に刺激をもたらすことが可能になったと考えることが出来る。夏目漱石の執筆は、写生文に着手し「我輩は猫である」や「こころ」等、数々の代表作を世に残した。

  • 小説のスタイル

自分自身の写生文を主に執筆していた夏目漱石であったが、「漱石文学の背景」の板垣によると「こころ」から少し表現方法が変わってきたそうだ。漱石の「こころ」は回想的で、多くの心理描写が入っていることから「感覧の独自な表現法が、工夫されている。漱石のそれまでの客観的な文体ともちがって、一種の豊かで新鮮な味わいの文体が生まれた」と述べられている。この表現方法が「こころ」を外国の文芸のように思わせる原因なのだそうだ。「心理描写を入れた内面的なリアリズムを、漱石がこころの中にもこなしきっていた」と述べられていることから、それまでに学習し、蓄積してきた表現方法でこころをアレンジしたのではないかと推察できる。そもそも、「こころ」は「人の心のエゴイズムと倫理を問う」という内容で友人の恋人を奪ってしまった罪悪感を基にした作品であるそうだ。確かに、「罪悪感」という心理は誰もが一度は味わった経験があると予想できるし、その心情を今まで同様に客観的に表現するのではなく、新たな心理描写にチャレンジしたことから人の感情をよりリアルに、またこれまでの作品よりも斬新に執筆することができたのだろう。

駒尺は、漱石のことを平等主義であり、独立の精神を持つ人と評価している。「この独立と平等の精神こそが、その後の文学活動を押し進めゆく、核であったと思います」と駒尺が述べているように、漱石の思想である独立と平等の精神は、漱石の文学作品に大きな影響を与えたということができるだろう。実際に、海外留学を経験した漱石は、海外に飛び出してより多くのものを学ぼうとした姿勢から、留学経験で「独立」を体現したと言えるし、「独立」とは「他に頼らないこと」、つまり「自分一人」という意味を表し、漱石の作品の特徴である「神経衰弱」ともうまくマッチする。

  • 森鷗外との比較

夏目漱石は、執筆の主なジャンルは写生文であり、細かな心理描写で読者が登場人物の感情を汲み取りやすい作品が顕著である。ほぼ同じ時代に生まれ、海外留学という、似た経験をした二人だが、生活環境には違いがあったり、お互いに正反対の部分を持っていたり、それぞれ困難を乗り越えたのちに、その時代を代表するほどの文学作家となった森鷗外と夏目漱石。彼らの特徴や思想をしっかりと把握した上で、彼らの作品を読んでみると、新たな発見が期待できるだろう。

【参考文献】

板垣直子『漱石文学の背景』株式会社鱒書房 (1956)

駒尺喜美『漱石という人―我輩は我輩である』思想の科学社(1987)

斎藤明雄『漱石と鷗外』株式会社文芸社(2015)

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